アメリカで死刑判決を受けた男性の無実が証明され30年ぶりに釈放
2015.4.7 09:00 知る・歴史・文化 # コメント(-)


1985年、米アラバマ州バーミングハムのファストフード・レストランのマネジャー2人が射殺された事件で死刑判決を受けて収監されていたアンソニー・レイ・ヒントン(現58歳)が無罪であることが証明され、約30年ぶりに釈放されたそうです。
1986年12月の公判で示された弾道学上の証拠が信用できないと判断されたことが、ヒントン氏の釈放につながったとのこと。
「太陽が輝いている」と喜びを語り、「彼らはなにがなんでも無実の私を死刑にしようとした。私は30年間も死と隣り合わせにいた。」と話したそうです。

同州の専門家は、犯罪で使用された銃弾がヒントン氏の母親から押収された銃から発砲されたものだと証言しましたが、その後行われた調査で、その証言内容が疑わしいという結果が出ました。
その後も裁判は長期間にわたって続き、昨年ついに連邦最高裁がヒントン氏は適切な弁護を受けていなかったと判断したことで被告側は大きな勝利を収めたそうです。ヒントン氏の法廷弁護士が証人として雇った専門家は、検察側の弾道学上の証拠に対して適切に反証できるだけの専門知識を持っていなかったのです。

ヒントン氏は釈放後の記者会見で涙を拭いながら、「彼らは銃をきちんとテストすればいいだけだった。力があると思っている人々は、自分たちは法よりも上にあると思っている。しかし私を死刑囚監房に送った人々は、いずれ神に申し開きをすることになるだろう」と話しました。
ヒントン氏を援助していたのは、経済的に貧しい被告や収監者に法的代理人を付ける活動をしている非営利組織(NPO)「公正な裁きのイニシアチブ(Equal Justice Initiative、EJI)」です。EJIから派遣された弁護人が、ヒントン氏を犯罪に結びつける十分な証拠がないと主張。同州ジェファーソン郡巡回裁判所のローラ・ペトロ判事は全ての罪状についてヒントン氏を無罪としました。

事件が起きた1985年当時29歳だったヒントン氏は、死刑が執行された人も含めてアラバマ州史上、最も長期間にわたって収監された死刑囚の一人です。
EJIによると、警察はこの事件で証人や指紋などの証拠を見つけていませんでした。同じ年に他のレストランでも同様の事件が発生し、マネジャーが撃たれて重傷を負いましたが、マネジャーはヒントン氏による犯行だったと証言。しかしヒントン氏は事件当時、現場から約24キロメートル離れた職場で勤務しており、上司や同僚がアリバイを裏付ける証言をしたにもかかわらず、有罪判決を受けました。

ヒントン氏の主任弁護人、ブライアン・スティーブンソン氏は、不正な有罪判決が出された理由の一部にはヒントン氏が黒人であることもあったと指摘します。
「人種、貧困、不適切な法的支援、無実の罪を着せられた人に対する検察側の無関心な態度が相まって、教科書に載るような典型的な不法行為を作り上げた」と話しました。

米NPOの死刑情報センターによると米国で1973年以降に死刑判決を受けた後で無実になったのはヒントン氏が152人目、2015年では2人目だそうです。via:AFP
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